このたびは、掲載が大変遅れ、誠に申し訳ありませんでした。
12月12日、なみはやドームで行われた第63回全日本大学ボクシング王座決定戦。同志社は11-0で拓殖大学に敗れた。
大阪に立つ。緊張感に満ちた、なみはやドーム。同志社大学ボクシング部がいる。どこかしら馴染んでいないのは初出場のせいか。関西を初制覇したチームにとってここは未知のゾーン。部員の顔を見る。いつもとは違う引き締まった顔。主将の木田(商4)は笑顔だった。「本当はとても緊張していた。でも、直前になって開き直れた」。腹をくくった主将の選手宣誓で、最終決戦はついに幕を開けた。

試合前、笑顔を見せる木田

厳しい表情でアップを見つめる金(文情4)ら控え選手
トップバッター・遠藤(経4)がリングへ登る。リーグ戦では気持ちの入ったボクシングで、チームに勢いを与え続けた。そしてこの日も遠藤は、遠藤に変わりなかった。「果たして、格上の拓殖大に勝てるのか。自分たちは関東に通用するのか」。誰もの心にあった不安。吹き飛ぶ。拳で吹き飛ばす。堂々としたボクシング。随所に見せる連打、効果的。「相手も1発受けて面食らったんじゃないかな」(河村監督)。決着は判定へゆだねられた。どちらに転んでもおかしくない。しかし、喜びに沸いたのは拓殖。差は”わずか”。「十分勝負できる」。チームに火がついた。

遠藤の堂々とした戦いには、敢闘賞が送られた
フライ級・吹田(法1)。関西リーグ全勝のこのルーキーに対面するのは、全日本チャンピオンであった。だが、おくすることなく向かっていく。それでもチャンピオンは上手い。確実にパンチを当てる。ヒットの印象も良い。判定負け。コーチの朴は言った。「よくやった。あいつはこれから」。手痛い敗戦にも光はあった。
続くは山方(商4)。しっかりガードを固めて、前に出る。それが自分のボクシング。その体に、相手のすさまじいパンチが浴びせられた。耐える。また、耐える。前のめりになる。体がふらつく。ふらつくけれど倒れない。「手を出せ!」。声援が飛ぶ。カウンター。さあ反撃だ。前へ。山方の右が相手の顔をとらえ始める。打たれても絶対に下がらない。そこに4年間のありかを見る――。だがやはり、王者。すぐさま冷静さを取り戻した。レフリーストップで完敗。それでも、「いい顔をしていた」(河村監督)。持てる力を出し切った男の表情は充実感に満ちていた。

攻勢に出る山方
この時点で、不戦敗も含め0-4。圧倒的な差はない。しかし、何かが足りない。勝つための何かが。それをさらに実感させられたのは、5人目以降だった。
藤崎(商2)、門田(文3)、伊藤(スポ2)、吉田(政策3)、そして小船(商1)。関西では強さを見せた選手たちが、次々に敗れてゆく。新戦力・松原(スポ1)も及ばない。戦えてはいる。十分勝機はある。それでも、判定は拓殖に。この差は何か。「相手は試合慣れしていた。試合中の修正能力が高い」(河村監督)。「同志社も良いパンチはあった。だが、印象が良いパンチは全部拓殖側。アピールポイントをしっかり押さえていた」(朴コーチ)。
そんな中で、最も勝利に近づいたのは主将・木田(商4)であった。相手とは、これまでに2回対戦している。最強のライバル。「最初から飛ばした」。的確なパンチで確実にポイントを稼ぐ。集中力は高い。3Rに入る。試合の主導権は、完全に木田が握っていた。「勝てるぞ」。応援席の声援も最大になる。その時だった。まさかのダウン。崩れたのは、木田。「ボディが効いた」。予兆はあった。後半、体力が落ちボディへのパンチをよけきれない。それまでの対戦でボディがなかったことも、木田を混乱させていた。会場の空気が一変する。立ち上がったが、ダメージは明らかに大きい。徐々に押されだした。それでも主将を信じる。チームの負けは既に決定した。それでも、チームを引っ張ってきた男の背中を、信じる。が、無情にも二度目のダウン。もう起き上がれない。河村監督はタオルを投げ入れた――。負けを受け入れるのに、しばらくの時間を要する。関東の強さを再認識した。

序盤から中盤にかけて試合を有利に進めた木田であったが…
後日談。「あれが全てです。17年間のボクシング人生、最後にあの舞台で、あいつと戦えた。全力を出した。あれで勝てなかったらしゃあない。負けたけれど、すがすがしかった」(木田)。
黄昏の時、監督の目には涙があった。「0-11での敗戦。くやしい。どれだけ良い試合してもこの結果が全て。なぜこの結果か。みんなで考えていってほしい」。そして、引退する4年生へ。「例年より多い代。7人全員、目標に対してしっかりとコミュニケーションとれた。本当に立派になったな。お疲れ様でした」。来年度もチームの根底は変わらない。「変な色気を出さずに。熱のこもった試合をする。そして総合力で戦う」。

試合後、悔しさをにじませた河村監督
拓殖戦を振り返る。全体を通して感じた関東との差。それは、3R全体を整える修正能力、要所を押さえたパンチ、巧みな駆け引きなどだと思う。そして大切なことは、戦った選手が感じたものを、これからチーム全体に落とし込むこと。フィードバックし、総合力を高めることではないだろうか。12.12の敗戦はとてつもない財産をチームに残した。
私はこの一年の感動を忘れない。打たれても前に出て手を出し続ける、泥ぐさいボクシング。声を枯らし共に戦い続けた、控えメンバー。間違いなく関西一だった、チームの一体感。熱き心に何度も泣いた。根底に流れるものを持ち続け、進化を遂げて欲しい。(高橋一寿)
Lフライ級・遠藤 ×
フライ級・吹田 ×
フライ級・ -
バンダム・山方 ×RSC
バンダム級・藤崎 ×
フェザー級・門田 ×
フェザー級・松原 ×
ライト級・伊藤 ×
Lウェイター級・吉田 ×RSC
ウェイター級・木田 ×棄権
ミドル級・小船 ×
0-11で同志社の負け。