12月24日から27日にかけて、長野市多目的スポーツアリーナ(ビックハット)にて行われている第89回全日本フィギュアスケート選手権大会。男子FSが26日に行われ、同志社からは友野(スポ4)と森口(商1)が出場した。前日のSPをそれぞれ7位と17位で折り返し、挑んだFS。友野は昨年と同様6位、森口は12位で全日本を終えた。

初の全日本に挑んだ森口
第2グループに登場した森口。冒頭、大技の3回転アクセルに向けてスピードを上げ、高く跳び上がるが惜しくも転倒。「緊張にのまれてしまった」と大舞台ならではのミスに悔やんだ。しかし、「普段の練習の時から、失敗をしてもすぐに立て直せる気持ちを作りなさいと先生にもいつも言われていた」という言葉通り、気持ちを切り替えて2本目の3回転アクセルをコンビネーションで成功させる。疾走感と重厚感のある滑りで曲の雰囲気を表現しながら、続くジャンプも危なげなく決めていく。見せ場のコレオやステップでは「スケートを滑る楽しさを感じて」。曲の盛り上がりに合わせ、高身長と長い手足を活かしたダイナミックな滑りで魅了した。
高難度ジャンプを加点のつく出来で多く決め、大舞台で129.92点という高スコアを叩き出した。4回転を構成に入れていない選手で最高位という誇らしい結果を残した。17位から5つ順位を上げ12位となり、「満足はいってないんですけど、来シーズンに向けていい経験になったかな」と振り返った。

気迫あふれる演技を見せる
この全日本に強い覚悟と信念を持ち、表彰台のみを追い求めて挑んだ友野。しかし昨日のSPでは自信のあった4回転で転倒。悔しさが残る7位でSPを終えた。今朝の曲かけ練習ではほぼ全てのジャンプを完璧に着氷。昨年、会場を歓喜の渦に巻き込んだ『ムーラン・ルージュ』の再演に向け、最終調整を行った。
そして迎えたFS。直前の6分間練習でも4回転ジャンプを中心に着氷し調子の良さを見せた。
真っ赤な衣装に身を包み、荘厳な音楽に乗って4回転トール―プに向かう。高く跳び上がるもステップアウトとなり、コンビネーションジャンプにできなかった。さらにそのミスが尾を引き、4回転サルコーの回転が抜けてしまう。しかし続く4回転サルコーには何とか2回転トール―プをつけ着氷し、意地を見せた。

力強い表情も友野の魅力の1つ
1つ1つの要素を加点の付く出来で決める必要がある中盤では、細かい乱れが目立った。堪えるジャンプやスピンでの取りこぼしが多く、続く3回転アクセルも転倒となり「自分の心の奥底の芯の弱さが出てしまった」。しかし、困難な状況でも友野は決して諦めなかった。「ジャンプだけでなくて表現も僕の武器の1つなので、しっかりそこを見せていければ」。渾身のコレオシークエンスでは鬼気迫る表情とスピードで、見る者に大きな感動と高揚感を与える。NHK杯と同様、5点をつけるジャッジも見られた。「試合は1つ1つ無駄にしたくない」という思いを胸に、最後の最後まで足を動かしつづけ、フィニッシュを迎えた。
「もう話にならないくらい。もう今までで一番って言っていいぐらい沢山努力してきたので、それを全て棒に振る演技をしてしまった」。演技後、フィニッシュポーズの力強い表情から一変、悔しさをこらえきらない表情を浮かべた。それでも、キスアンドクライでは観客に向けて気丈に振る舞う姿があった。

悔しげな友野
「今までで一番ってぐらい仕上がりもよくていい練習も積めていた」。4回転が普通のジャンプになるほどに納得のいく練習ができていたからこそ、本気で表彰台を目指した。だからこそ、これまでにないほど悔しさが強く友野にのしかかった。
それでも、ただ足を前に進めるしかない。「逆に言ってしまえば、そこが噛み合えば強くなれると思う」。まだまだこれから、という言葉には、悔しさだけでなく未来への希望と確かな自信が感じられた。
「壁があるのは成長できてる証拠なので、そこを越えられるようにまた明日からがんばりたいなと思います」。血のにじむ努力をしてきたからこそ感じる壁がある。
しかし、必ずその壁は壊せるはずだ。生まれながらに持つ「表現することの楽しさ」を胸に、立ちはだかる壁を扉に変えてゆけ。【文責・井代奈那子、写真・アフロ/JSF】
☆森口 インタビュー
ーー演技を振り返って
今日1日、朝の公式練習から6分間練習までアクセルの調子もだいぶ良くて自信もあったんですけど、1本目が緊張に飲まれてしまって、こけてしまって。3本目のループも詰まったりもしたんですけど、1本目のアクセルのミスから2本目のアクセルなど、後半の3回転+3回転も立て直すことができたと思うので、満足はいってないんですけど、来シーズンに向けていい経験になったかなと思います。
ーー1本目のミスから立て直せた理由
まず、いつも普段の練習の時から、失敗をしてもすぐに立て直せる気持ちを作りなさいと濱田先生にも田村先生にも村元先生にも佐藤先生にもいつも言われていて、その毎日の立て直す練習が力になったと思います。
ーープログラムにかける思い
この『シルク・ド・ソレイユ』は、ずっと小さい時から色んな選手が使ってきてて。鈴木明子さんだったり無良崇彦さんだったり、トップの選手もずっと使っていて。
あと、暗い曲になると僕ドキドキしやすくて、このトーテムでもOでも、どんどんワクワクしていくような、盛り上がっていく曲なので、自分でも滑っていて気持ちいいなと思いましたし、Oのコレオステップでもスケートの滑る楽しさを感じて滑ることができるなと思ったので、この曲を選びました。
ーー大学の学業との両立は
今年大学生になってから、大学に行くことが少なくてオンラインの授業になったんですけど、オンラインになっても練習と練習の間の休憩時間に課題の勉強やチェックをして。シーズン入る前の春学期でまず単位を取ってしまおうと思って、一学期で40単位取れるんですけど春で24単位取ってしまって、練習に集中できて残り16単位を取れるように、シーズンに向けて練習しやすい環境を作れるように勉強も頑張ってきました。
☆友野 インタビュー
――演技を振り返って
もう話にならないくらい、もう今までで一番って言っていいぐらい沢山努力してきたので、それを全て棒に振る演技をしてしまったので、試合でこういう演技をしてしまったのは、自分の心の奥底の芯の弱さが出てしまったのかなと思いますし、まずはこの弱さと向き合うことから始めたいなと思います。後はほんとに毎回そうですけど、諦めずに何度も…壁があるのは成長できてる証拠なので、そこを越えられるようにまた明日から頑張りたいなと思います。
――ミスの要因
ちょっと分からなくて…練習も本当にいい練習積めていて、やっぱり一番の原因は試合に対する苦手意識が自分の中で勝手にあって。なんだろ…もっともっと練習でも本番を想定した練習をしていかないとなと思うし、やっぱり自分に自信がまだまだ足りていないのかなと思うし、少しは出てきたんですけど…。それがもっと出るように練習していかないとなと思います。
――パフォーマンスが上がらない部分は難しいシーズンという影響も?
そうですね、試合がだめで…今までで一番ってぐらい仕上がりもよくていい練習も詰めていたので、もうあとはやっぱり本当に試合。でも逆に言ってしまえば…ポジティブに言えばそこが噛み合えば強くなれると思うし、もうそこまで来ているので。 あとは試合で自分の強さがどれだけ出せるかっていうのだと。そこを追求していかないと、と思います。
――終盤のコレオについて
試合は1つ1つ無駄にしたくないし、最後ぐらい…ジャンプだけでなくて表現も僕の武器の1つなので、しっかりそこを見せていければなと思って演技しました。
――構成変更の手応えは
手応えはかなりあって、変えてからすごく成長を感じられていたので、そこを試合で出せればいいなと思いますし、まだまだこれからだなと思います。
――来年以降の練習環境
特に何もコーチも変わらなくて一緒ですし、今の環境のまま北京を目指して頑張りたいです。(所属は)まだ未定です。
――試合に関するいい意味での鈍感さはどうやってつけていけたらいいと思うか
うーん…まだちょっとわからない。今回は試合の前にしっかり自信がつく練習をしてきてそれでも駄目だったのでまだ足りなかったのかもしれないし…やっぱり試合を想定した練習を沢山して克服していくしかないなと思います。
☆本田太一 インタビュー
――同期への思い
特に一希(友野)はちっちゃい頃からずっとやってきて、昨日一希がサルコーを失敗したのが信じられないくらい調子がいいのを知ってましたし、今日絶対いい演技をしてくれると信じてます。西日本が終わった頭から僕の引退を意識し始めたのか、よく連絡が来るようになり…。目指しているところは少し違うんですけど、昨日の僕の演技も後から見てくれたみたいで。ジュニアの頃からは同じレベルで切磋琢磨してたからちょっと悔しいんですけど、昨日は少しでもいい演技を見せられてよかったと思います。