11月16日から18日にかけてモスクワで行われたグランプリ(GP)シリーズ第5戦ロシア大会において、友野一希(スポ2)がGPシリーズ初の表彰台となる3位に入った。
日本から遠く離れた地で、日本のスケーター2人が世界を相手に戦い、そして人々を魅了した。2人は揃って表彰台に立った。1人は羽生結弦(ANA)。そしてもう1人は、友野一希だ。
ショートプログラム(SP)は4位につけていた。冒頭の4回転サルコーは回転不足になったものの大きなミスなくまとめ、フリースケーティング(FS)での逆転を狙った。

近畿選手権での友野(撮影:安本夏望)
友野の『リバーダンス』が始まる。1本目は4回転サルコーのコンビネーションジャンプだ。勢いよく踏み切り、オーバーターンで着氷する。それでも意地で2回転トーループをつけた。続くジャンプも4回転サルコー。2本目の4回転ジャンプは美しい文句なしの出来栄えで、加点もついた。勢いは止まらない。トリプルアクセルなどの高難度のジャンプを次々と着氷させ、全てのジャンプをまとめた。ステップは大観衆から手拍子を受け、世界でその存在感を示してみせた。
FSは156.47点、SPとの合計で238.73点となり自己ベストを更新。それでもまだ、伸びしろは十分ある。SP、FSを通じていくつかのジャンプで回転不足を取られた。オーバーターンとなったジャンプもあり、これらを修正すればさらに高い点数が望める。
何より注目すべきは、演技構成点(PCS)だ。これまで7点台が主だったPCSが、今大会では8点台がつくようになった。優勝した羽生を初めとするトップスケーターたちは、8点台を揃える。まだ点差はあるが、確実に彼らに近づいている証拠だ。

世界でもその存在感を示してみせた
「どん底から何度でも這い上がっていきたい」。スケートカナダ後の西日本選手権での言葉だ。今季は自らの手でGPシリーズの出場権を勝ち取り、「表彰台という高い目標に向かい、全力で挑みたい」と意気込んだ。しかし自身1戦目のスケートカナダは9位に終わる。「“シニアの洗礼”を受けた」。でも、そこで終わらないのが友野の強さだ。ここぞという試合で結果につなげる力は、皆が認めるものだろう。GPシリーズでの表彰台という“高い”目標を、ロシアの地で見事に実現してみせた。
世界を舞台に、鮮やかに友野が駆け上がっていく。どこまでも上へ、上へ。友野の挑戦は続く。(名倉幸)
※写真は近畿選手権のものを使用しています。また、友野選手のコメントは西日本選手権等のものです。