9月18日に服部緑地陸上競技場特設レンジ(大阪府)にて行われた第59回全日本学生アーチェリー男子王座決定戦。同志社からは光永(商4)、大隅(社4)、長田(理工4)、畑本(商1)が出場し、全国3位となった。

3位決定戦の様子
小雨が降る朝9時。いよいよ、第61代アーチェリー部にとって勝負の日がやってきた。
昨日の個人インカレで大隅が準優勝を飾ったほか、選手それぞれが今日への感覚を掴み、チーム戦である今日の王座に挑んだ。
1/8、1/4ラウンドは共に「自分たちのいつも通りの試合をしたら勝てるという自信があった」(光永)。王座優勝を見据えるからには、余裕をもって勝利を得たい試合だった。
その言葉通り、どちらも0-6とストレートで相手を下し、順調に準決勝出場を決めたが「雰囲気が作り切れていなかった」(長田)。特有の緊張感や風の強い状況など様々な要素が重なり合い、10点がなかなか出ない。チーム全員で声を掛け合い士気を上げるも、メンバー全員がどこか不安な気持ちを抱えていた。「1、2回戦はあまりよくなかったので大丈夫かなという気持ちがあった」と、4人目のメンバーとして冷静かつ熱くプレーを見守っていた畑本も危機感を感じていた。
本来の力が出し切れないままで迎えたセミファイナル。相手は、関西、さらには日本のトップに君臨している近大だった。「そんな状態でもちろん勝てる相手ではなかった」(大隅)。
質が高いだけでなく安定した行射を見せる近大に食らいつくも、流れを変えるチャンスをつかみきれず、1ポイントの差がどんどん開いていく。「全く自分たちのプレーが出来ずに手も足も出なかった」(光永)。圧倒的な強さを前に逆転への糸口を見つけることができないまま0-6で悔しい敗戦となり、掲げていた王座優勝への道は閉ざされた。
しかし、ここで諦める者は1人もいなかった。セミファイナルと3位決定戦の間の休憩で気持ちを切り替え、「闘志むき出しで行こうと思った」(大隅)。悔しい気持ちを心の奥にとどめ、全員が今出来ることに焦点を当て、前を向いた。「ブロンズでは何があっても絶対勝って3位をチームに持って帰らないといけない」という主将・光永の固い決心は、口に出さずどもチームメンバー全員の心の中に共有されていた。試合直前の円陣で改めてチームの心を1つにし、早大との3位決定戦に臨んだ。

気持ちを切り替え挑んだ

仲間同士で士気を高め合う
女子チームからの声援も背中を押し、運命の3位決定戦が幕を開けた。
そこには1.2回戦とは全く違う、緊張感がありながらもリラックスした表情の選手達がいた。「確実にメンタル面で気持ちが入った」(光永)。気持ちと技術が完ぺきに噛み合った成果はすぐに表れ、冒頭から光永、大隅が連続で10点を叩き出す。「1射目で嶺さん(光永)が10を射って、その時点で『行ったな』と思った」(畑本)。また、「前2人が10、10って射ってくれてそこでスイッチが入った」と、2人の最高の滑り出しに続き長田も力強いプレーで強さを発揮した。
序盤に2点を先取すると、まだまだ同志社の勢いは止まらない。3人全員がリズムよく的の中央を射抜いていく。良いプレーが出ればチーム全員で喜び鼓舞しあうことで唯一無二の一体感が生まれていった。
また行射の合間には「チームを楽しませたりとかみんなのちょっとした溝を埋めるみたいな仕事をしないといけない」(畑本)。その言葉通り、集中力と一体感を切らさずにメンバー同士を繋ぐ役目を畑本が見事に果たした。

ガッツポーズを見せる長田
4-0で迎えた終盤。あと一歩で勝負が決まるという中でも決して妥協や油断をしない。「最後なので守ることなく攻めるだけでやった」(大隅)と、常に100%のプレーを見せ続けた。
そして迎えた最後の行射。「自分が何点打てたら勝ちとか全然わからなくてとにかく10点打つ!という気持ちで打った」(長田)。初の王座メンバー入りを決め、常に自身の中の緊張と戦ってきた長田の1射が勝利を決め、見事3位をつかみ取った。

主将・光永の涙
4年生の光永、大隅、長田にとっては、これが最後の王座だった。試合後には言葉にならない思いがあふれ、大粒の涙を流した。
主将として部を引っ張ってきた光永は「4年間の努力が全て出たと思うし、最高のプレーが出来てすっきりと胸を張って終われる」と振り返った。今までの苦しい練習や挫折を乗り越えつかんだ勝利だからこそ、その喜びは格別だった。
また、大隅は「チームとして出ているメンバーだけではなくチーム同志社として戦うことが出来た」。今回コロナウイルスの影響で無観客開催となり、部員全員が現地で応援することはかなわなかった。しかし、だからこそ部員全員の思いを背負って戦い、全国3位という誇らしい結果を得た。
1年生の頃から王座でベスト8どまりと悔しい思いを募らせていた光永と大隅、そして4年目で初めて王座のメンバーとなった長田。それぞれが、ラストイヤーの王座を勝利で終えることが出来た喜びを噛み締めた。
4年生の集大成を最も近くて見守った畑本は「本当に尊敬できるし自分たちもああいう風にならないといけないと思う」と語った。4年生の思いは、また新しい世代へと確実に受け継がれていく。
王座の舞台でアーチェリーという競技を心の底から楽しみ、掴んだ勝利。男女アベック優勝という夢はかなわなかったものの、2016年以上ベスト8と悔しい結果が続いていたアーチェリー部男子にとって、まさに「胸を張れる結果」を残し、全国にその強さを証明することができた。大舞台で最高の笑顔を咲かせ、第61代の挑戦は幕を閉じた。【文貴・井代奈那子、写真・井代奈那子、片渕千尋】
☆集合写真



☆4年生集合写真
