8月26日から27日にかけて、白石市文化体育活動センター(宮城県)で第74回全日本学生新体操選手権大会が行われた。同志社からは男子4人、女子2人の選手が出場。男子は東本(スポ2)が個人の部で3位入賞を果たし、全日本選手権への出場を決めた。
前回大会2位、予選となる西日本インカレで優勝。やはり観客の注目は、優勝候補東本へと寄せられていた。しかし「練習不足による不安と緊張があった」と、そこには余裕さえ感じるいつもの姿はなかった。 1日目のリング、スティックでは高難度のタンブリングを成功。しかし大きな技と技をつなぐ間で、手具が手からこぼれてしまう。細かい減点が足を引っ張り、1日目終了時点でまさかの6位。昨年優勝者・岩渕(青森大)も、大舞台の波に呑まれ7位と出遅れた。前半種目を終え、トップから6位までの選手が1点差にひしめく大混戦。残る2種目での巻き返しを誓った。
迎えた2日目。「守るものもなかったためしっかり攻めて演技することを意識した」。昨日の反省を生かし、試合への臨み方を変更。心機一転、クラブへと挑んだ。作品の新調を機に、得点を伸ばしてきたこの種目。曲が始まると、身体は1本の線のようにしなやかに動き出す。高速捻りからの床受けを成功させ、続くタンブリング。体の回転中に手具を飛ばす離れ業で会場を沸かせた。昨日の硬さはなくなり、伸びのある新体操でノーミスの演技。18.250をマークし、東本にも安堵の表情が見えた。
最後に控えるのはロープ。序盤から立て続けに投げを成功させると、音楽に合わせた細かいステップで勢いにのる。疾走感のある演技で、観客の視線を釘付けに。深い屈伸からのラストポーズを決め、ほぼ完璧な1分半をやり切った。西日本王者の意地を感じさせる怒涛の巻き返しで、個人A・B班を終え、首位に立つ。優勝争いは、後半に控える3選手に委ねられた。そのうちの1人、岩渕は東本に負けじと巻き返しを図るも、得点が伸びず。東本の3位以上が決定した。しかし、花園大の2選手が西カレから大きく得点を伸ばし、ワンツーフィニッシュ。昨年2位だっただけに悔しさも残るが、全日本学生3位に輝いた。
「自分ならもっとやれたと思う」。東本が口にしたこの言葉が、ただの負け惜しみではないことは、2日目の演技を見れば分かった。誰よりも輝きを放っていた後半種目。彼が全日本王者になる姿は容易に想像できた。リベンジの舞台は秋に控えるJAPAN。社会人選手も出場する日本最高峰の大会だ。今回の悔しさをバネに、最高の笑顔で栄冠を奪取してくれるだろう。
東本以外の男子3選手は、全日本選手権への出場は叶わなかった。しかし、ルーキーながら堂々の存在感を見せたのが、福島(理工1)、井岡(理工1)。中でも11.025をマークした福島のクラブでは、初めて曲選びから構成までを自分で考え、今大会に挑んだ。開始早々の投げを落下してしまうものの、落ち着いて立て直す。迫力のあるタンブリングに、儚い曲調を表現した柔らかい動作。自身も納得の、今後につながる演技だった。
そしてもう1人、初めての全カレとなった井岡。「高校生から新体操を始め、自分にとって初めての全国レベルの大会で前日練習から最後までずっと緊張で手が震えていた」。そう語った彼だが、スティックではタンブリングや投げを次々と成功。中盤の投げが手にかすり落下したものの、そこから崩れることなく持ち堪える。多少の固さはあったが、華々しい全国デビューを飾った。
4年生の山崎(社4)は、最後の公式戦にさまざまな思いを胸に臨んだ。「1年生の関カレを思い出すと、散々だったと思う」。3年前の春、一部種目を除き、ほぼ未経験で同志社体操競技部の門を叩いた。初戦となった1年生時の関西インカレではほぼ全ての投げをキャッチできず、痛感した自身のレベルの低さ。大学から本格的に競技をスタートさせたことで、人知れない苦悩や葛藤が押し掛かった。そんな困難を乗り越え、立った全カレという夢舞台。「誰かの記憶に残る演技をする」と意気込み、ラスト演技を迎えた。
胸を張り大きく返事をして、最終種目ロープへ。AKB48の『フライングゲット』の明るい曲調を自分のものに、笑顔で会場を盛り上げる。新体操界では異質なアイドルの楽曲を使用した、山崎らしい演技構成だった。躍動感ある大きな動きに加え、見せ場の投げを全て成功。3年前の山崎の姿はそこにはなかった。集大成の演技を終え、深々と観客に一礼。対戦相手や保護者、後輩からの惜しみない拍手を背に会場を後にした。最後の舞台を全日本インカレという最高の舞台で終えた山崎。「笑顔で思いっきり演技できたので、悔いは全くないです」。誰よりも新体操を楽しむ彼の姿は、多くの人の記憶に残ったに違いない。4年間の努力の結晶が、新たな道への後押しとなる。
宮城の地で数々のドラマを見た。3位という結果だけでは計れない、後半種目で見せた西カレ王者の意地。そして今大会で引退する選手の4年間の集大成。さまざまな思いが懸かった全日本インカレが幕を閉じた。次に控えるのは、秋のJAPAN。同志社男子からは東本が出場する。今大会の悔しさを晴らすために、再び練習へと励む。次なる日本最高峰の大会で、栄冠を獲るのは東本だ。(文責・林康陽、撮影・杉本結衣、家村有多)