12月25日、秩父宮ラグビー場(東京都)で第59回全国大学ラグビーフットボール選手権大会準々決勝が行われた。帝京大と対戦した同志社は、0ー50で完封負け。昨年の大学王者を前に力及ばなかった。
昨年の大学選手権から1年が経ち、因縁の再戦となった今試合。「チャレンジャーとして挑もう」(大森・商4)と熱い闘志を燃やし、選手たちはグラウンドに立った。
最初に好機をつくったのは帝京大だった。前半8分、自陣10㍍付近のマイボールラインアウトを失うと、一気に自陣深くに侵入されてしまう。1対1の局面で少しずつ後退し、連続攻撃を止めることができない。最後はオフロードパスをつながれ、あっけなく先制を許した(0ー7)。「帝京の強いフィジカルの部分で受けてしまった」(西村・商4)。ダブルタックルで押し返す場面もあったが、素早い攻撃にリロードが追いつかなかった。
反撃したい同志社だったが、その後も流れを握られた。スクラムでプレッシャーを受け、クリーンなボールを出すことができない。それでも19分、相手の反則で初めて敵陣深くに侵入する。敵陣22㍍付近のラインアウトからモールを形成し、準備してきたプレーを繰り出す。数的優位のブラインドサイドに攻撃を仕掛け、ボールがつながればというシーンだった。しかし、ラストパスが合わず落球。絶好のチャンスを逃し、得点を挙げることはできなかった。
逆に帝京大は、セットプレーの優勢を生かし同志社ゴールに襲いかかる。21分、自陣22㍍ライン内側のスクラムを制圧されると、最後は相手NO8奥井がねじ込みトライ(0ー14)。
一方の同志社も、直後のリスタートキックオフを再獲得しフェーズを重ねる。25分、帝京大のハイタックルからPG(ペナルティーゴール)を選択。しかし、SO大島(スポ1)のキックは枠を捉えられず、エリアを戻されてしまう。28分にもピールからサインプレーを仕掛けたが、不発に終わった。
前半の終盤は帝京大の反則が重なり、敵陣での時間が増える。33分、敵陣5㍍のラインアウトからモールを形成するも、サックされタッチへ押し出された。「セットプレーが安定しなかったので用意してきたアタックができなかった」(鈴木康・スポ4)。39分には、レッドゾーンでスクラムを押し込まれ、大外のスペースを突かれる。最後は右隅にトライを許し、3トライ差をつけられた(0ー19)。
「今日試合やる中で、ゲームの運び方に少し迷いがあった」(西村)。相手ディフェンスの圧力を受け、準備してきた攻撃ができなかった前半戦。伝統の展開ラグビーも鳴りを潜め、無得点のまま試合を折り返した。
試合の主導権を奪い返すためにも、先に得点したい後半。しかし、最初に防御網を破ったのは赤いジャージーだった。2分、FWとBKが一体となったパスワークに同志社ディフェンスが翻弄(ほんろう)され、失点(0ー24)。8分にも、モールから得点を許し、点差を広げられた(0ー29)。
このままでは終われない同志社は10分、ここ数試合で後半の火付け役を担ってきた馬渡(スポ4)と奥平(法2)を投入し、挽回を試みる。12分、大森のビックタックルからカウンターラックを仕掛け、ターンオーバーに成功。徐々にボールを握り始めると、15分にはゴール前で用意してきたスペシャルプレーを見せる。リモールの陣形からBK陣に展開し、西村がラインブレーク。ゴールライン手前まで迫る。しかし、ここでもラストパスがつながらない。「マイボールをキープできなかった、僕たちがやろうとしてることに形にこだわりすぎた」(新和田・社4)。帝京大の屈強なディフェンスを前に、トライを取り切ることができず再び流れを渡してしまった。
22分、自陣22㍍のマイボールスクラムをターンオーバーされ、相手SOにトライを許す(0ー36)。25分には帝京大のペナルティーで敵陣に侵入したが、モールを割られてしまう。「接点のところが帝京大学さんは本当に強かった」(梁本・社4)。関西リーグでは通用したセットプレーや自分たちの武器が封じられ、なすすべがなかった。残り10分を切ってからさらに2トライを加えられ、0ー50で大敗。「準備してきたものがあまり出せなかった」(小島・社4)と選手たちは悔しさをにじませた。
試合後、宮本監督は「この4年生たちだからここまで来れた。4年生が強い心とやるんだという気持ちを持って、10月からここに向けてやってきたのが見えたので、本当にありがとうと言いたい」と最上級生を称えた。試合中のキックティー、ウォーターボーイも全て4年生が担い、チーム一丸となって戦ってきた梁本組。秩父宮に駆けつけた多くのファンからは、温かい拍手が送られた。
「応援してくれている人たちが最後まで諦めずに自分たちを支えてくれたのが、本当に力になりました」(梁本)。順風満帆のシーズンではなかったが、昨年と同じ全国8強で梁本組は終幕。大学王者の強さを肌で感じた後輩たちに想いを託し、4年生は静かに紺グレを脱いだ。
(文責:勝部健人・撮影:松井麻衣、大嶽悠雅、浅川明日香)